7月21日に掲載の記事では、REN21が6月に発表したGSR(Global States Report)をもとに、世界の自然エネルギーの普及状況を紹介しました。一方、ここ足元の日本においての普及状況はどうでしょうか? FIT制度が大きく変わろうとしているいま、国内での普及状況を振り返りつつ、昨今の動きについて簡単に紹介をします。
堅調に伸びてきた国内での導入量
FIT制度が始まった2012年以降、これまでに太陽光を中心に多くの設備導入が進められてきました。当初2012年度には、大規模水力を含む再生可能エネルギーは、電力量全体の約10%程度だったものが、2017年度には16.7%、そして2018年には約17%に達しています。
出典:自然エネルギー白書2018/2019 Summary より
とりわけ、国内のFIT以降の普及を下支えしてきた太陽光の導入量は大きく、先に紹介したGSRによれば、累積設備容量では2019年末時点で日本は世界第3位。その容量は、エネ庁のデータで約5500万kWとなっています(2020年3月末時点)。追随する風力についても、導入実績ではまだ300万kW強と少ないものの、すでに認定量では約1000万kWに達しており、環境影響評価プロセスに入っている計画段階のものまで含めれば、さらに多くなります。
また世界第3位の資源量を誇る地熱に関しても、近年、資源調査が並行して行われており、今後も着実に導入が進んでいくものと考えられます。一方で、当初はその認定量が1000万kWを優に超えていたバイオマスは、材の確保や材の持続可能性の点で課題がある事なども原因で、現在は認定量で850万kW程度にまで下がっています。
このように、特に太陽光と風力をメインに伸びを見せる国内ですが、今後もこの2つを主力として、その導入を着実に進めていくもとのと考えられます。特に太陽光に関しては、海外のコストと比べるとまだ高いものの、それでも設備コストが着実に減少していることから、引き続き大きな役割を果たすものと考えられます。
出典:経産省 総合資源エネルギー調査会小委員会資料 より
さらなる導入拡大に向けて
先般の国会で「エネルギー供給強靭化法」が成立し、これまで普及を下支えしてきたFIT法が大きく変わる節目にあるなかで、今後、再生可能エネルギーの普及に向けたシフトがすすんでいくのか、いま注目が集まっています。
そして、すでに、そのシフトに向けた兆しが見え始めています。例えば、洋上風力がその1つです。先の官民共同会議では、関係者から2030年までに1000万kW、2040年までに最大4500万kWもの市場規模を期待する声が上がっています。また、一昨年に制定された再エネ海域利用法における、洋上風力を行うための優先的な実施地域である「促進区域」への指定が、秋田県をはじめ千葉県などで順次行われています。さらに、これに呼応するように、電力広域的運用推進機関(OCCTO)を中心に、送電能力を強化するための中長期の全国規模での系統整備計画である「マスタープラン」の作成がはじまり、2022年を目途に策定されることが決まっています。
折しも7月には、政府のインフラ輸出戦略の見直しによる石炭火力の締め付けに加え、経産省でも国内の非効率石炭火力の廃止の方向性が示されました。廃止分が、高効率火力として置き換えられるリスクが懸念されつつも、一方で、再生可能エネルギーにより代替できる余地が生まれ得るとの見方もあります。まさにいま、再生可能エネルギーの社会にシフトができるかが、真に試されている時期にあると言えます。