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クライメート・アクション・ネットワーク(CAN)は2023年11月、レポート「Renewable Energy Tracker (RET)」(再生可能エネルギートラッカー)を発表しました。

このレポートは再生可能エネルギー100%に向けた進捗を評価するものであり、世界の総人口の85%を占め、温室効果ガス排出量・エネルギー使用量・GDPの9割を占める60か国を対象としています。

ただし、本レポートの評価はあくまで再生可能エネルギーに関する評価であり、気候変動対策全般に対する評価でない点には留意が必要です。

日本の再エネランキングは?

評価はランキング形式で示されており、良い順から「チャンピオン」、「フロントランナー」、「モデレート(そこそこ)」、「トレーラー(後続)」、「スロースターター」の5段階に分類されています。

日本は60か国中32位で、「トレーラー(後続)」という評価になりました。

レポートで示された評価の概要は以下の通りです。

  • どの国も他国より一貫して高いパフォーマンスを示していないため、チャンピオンは空席。
  • チリ、ブラジル、中国という新興・発展途上国(EMDE)が上位3位を占める。
  • ベトナム、コロンビア、ヨルダン、インド、メキシコ、マレーシアなど、多くの新興国が先進国よりも良い結果を出している。
  • G20のメンバーであり、世界の温室効果ガス排出量の9%近くを占める5つの高所得国(日本、カナダ、韓国、サウジアラビア、イタリア)が低いランクとなった。
  • サハラ以南のアフリカ諸国はランキングの最下位に位置。OECD加盟国の富裕層から低所得国への多額の資金提供が緊急に必要であることが改めて強調された。

ランキングを踏まえた各国への提言

これらの評価を踏まえ、レポート内で以下が提言されています。

  • 先進国は2040年までに、その他の国々は遅くとも2050年までに、再生可能エネルギー100%のシステムを約束し、達成すべきである。
  • 各国政府は、2030年までに再生可能エネルギー容量を3倍以上に、エネルギー効率を2倍に向上させるとともに、化石燃料を公正かつ衡平な方法で段階的に廃止することを約束すべきである。
  • これらの世界目標は、公正かつ衡平な国内目標に変換され、包括的で透明性のあるマルチステークホルダー・アプローチを通じて、科学的に監視されるべきである。
  • 規制上の問題、インフラ、サプライチェーンのボトルネックに対処することにより、電力部門およびすべての最終消費部門における再生可能エネルギーの導入を容易にし、加速するために、国家目標、NDC、規制を強化すべきである。
  • 各国政府は、先進国から途上国への無償の資金協力と非債務創出資金の大幅な強化を約束し、これらの約束を緊急かつ一貫性をもって実現すべきである。
  • 政府と企業は、国家計画、政策、基準、認証、デューデリジェンス手続きを通じて、人と自然を第一に考えた、迅速で公正かつ公平な再生可能エネルギーへの移行を約束すべきである。
  • 政府および国際機関は、各国の正確かつ公平な評価を可能にするため、あらゆる再生可能エネルギーに関する最新かつ透明性のあるデータの入手可能性を確保すべきである。

日本への指摘ー原子力やアンモニア混焼によって化石燃料システムに閉じ込められる

日本は、化石燃料に継続的に投資しており、化石燃料のための世界最大の公的資金提供国のひとつであると指摘されています。また、日本が進める原子力やアンモニア混焼のような技術への投資は、日本(および日本が投資している国々)を長年にわたって化石燃料に依存したシステムに閉じ込めることになるとの批判も。

今回のレポートでは、日本が経済先進国としては再生可能エネルギーの導入で後れを取っていることが改めて報告されました。

また、同じアジアでも中国やベトナム、インド、マレーシア、インドネシアなどの国々は日本よりも高いランクを獲得しています。

東南アジア諸国に関しては、日本政府は「東南アジアには再生可能エネルギー賦存量が小さく、化石燃料を使わざるを得ない」と捉え、石炭アンモニア混焼推進を含む「アジア・ゼロエミッション共同体」(AZEC)を推進しようとしていますが、ランキングを見る限り、これらの国の再生可能エネルギーのポテンシャルや経済合理性を日本が適切に評価できているのか、今一度見直す必要があるでしょう。

日本国内においても、化石燃料から脱却するシグナルをしっかりと政府が示し、再生可能エネルギー導入に向けた抜本的なシステム改革を行う必要があります。

次期エネルギー基本計画では大幅に再生可能エネルギー導入に踏み込むような目標を設定し、野心的なNDC提出に向けた積極的な検討、化石燃料の規制に取り組み、労働者の公正な移行を支援するとともに、途上国へは真に気候変動対策に資する対策の資金と技術の提供を進めるべきでしょう。