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自然エネルギーにより持続可能な地域を将来に渡り増やしていくため、都道府県や市町村毎に自然エネルギーの割合を推計して自然エネルギー100%地域を見出し、評価する取り組みが10年前から継続的に行われています。永続地帯研究会(千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所の共同研究)では、2007年から毎年、「永続地帯」として日本国内の地域別の自然エネルギー供給の現状と推移を明らかにしてきました

地域における自然エネルギーの割合が、その地域の持続可能性の指標として有効であり、その地域の特性に応じて太陽光や風力、小水力、地熱、バイオマスなどの様々な自然エネルギーを導入した実績を指標として評価することにより、これまで経済的な指標などでは捉えられなかったその地域の持続可能性を評価することが可能となります。2018年3月に「永続地帯2017年度版報告書」で公表されたエネルギー永続地帯のデータ(2016年度推計)より、地域別の自然エネルギーの電力の供給割合から各地域の特徴をみていきたいと思います。

都道府県別の特徴

日本国内では、自然エネルギーの全発電量に占める割合がようやく2016年度に14.8%になったレベルですが、都道府県別にみると、大分県、秋田県、鹿児島県、宮崎県、群馬県の5つの県で、民生(家庭、業務)および農林水産用の電力需要と比較した自然エネルギー供給(大規模水力は除く)の割合が30%を超えています(図)。

図. 都道府県別の自然エネルギーの供給割合のランキング(2016年度推計値)|出所:永続地帯研究会

さらに、21の都道府県で、その割合が20%を超えていますが、都道府県毎に特徴があります(表)。第一位の大分県では地熱発電が16%になる一方、太陽光発電の割合も18%と高くなっており、同じ九州の鹿児島県や宮崎県も太陽光発電の割合が20%を超えており、群馬県や三重県で太陽光の割合が20%を超えています。

表. 県別の電力需要に対する自然エネルギーの割合(トップ5)|出所:永続地帯研究会

都道府県 太陽光 風力 地熱 小水力 バイオマス 再エネ
大分県 18.3% 0.2% 15.7% 5.6% 5.1% 44.9%
秋田県 3.8% 15.6% 11.0% 9.9% 3.6% 44.1%
鹿児島県 20.6% 5.3% 3.3% 4.4% 3.7% 37.2%
宮崎県 21.0% 0.4% 0.0% 2.7% 8.9% 33.0%
群馬県 21.0% 0.0% 0.0% 8.3% 1.3% 30.5%
全国 7.8% 0.9% 0.4% 2.2% 1.7% 13.0%

また、九州では宮崎県と大分県、その他の地域では、島根県と岩手県でバイオマスの比率が5%以上と高くなっています。一方、第二位の秋田県では太陽光の割合は低く、11%の地熱発電や10%の小水力に加えて風力の割合が15%と高くなっています。小水力では、第6位の富山県で23%、長野県で14%と高くなっています。風力では、青森県が13%と秋田県に次いで高くなっています。

さらに、135もの市町村では電力需要に対して100%を超える割合の自然エネルギーが供給されていると推計されています。風力発電だけでも100%を超える市町村は25あり、地熱発電では5市町村ですが、小水力発電では62市町村あることがわかりました。

2012年にFIT制度がスタートして太陽光発電の導入が急速に進み、15つの市町村では太陽光発電だけで100%を超えています。これらの発電設備のほとんどは、地域外の企業が所有・運営しており、地域の自然エネルギー資源を地域主体で活用するコミュニティパワー(ご当地エネルギー)としての取り組みが求められています。また、地域での普及の遅れがみられる自然エネルギーの熱利用(太陽熱、バイオマス、地中熱など)への本格的な取り組みも期待されています。

一方、東京都や大阪府など大都市では、エネルギーを大量に消費しているため、太陽光発電の導入がある程度進んでいるにも関わらず、自然エネルギー供給の割合が数%以下と非常に小さいことがわかります。

今回の推計では、都市部で重要な自然エネルギー源として期待される自治体の廃棄物発電施設を含めており、生ごみなどをバイオマス資源として算入しています。さらに、都市部において自然エネルギーの供給の割合を増やすためには、電力自由化や環境価値取引の仕組みなどにより、自然エネルギーが豊富で供給が可能な地域と都市との連携の取り組みが期待されます。

執筆:環境エネルギー政策研究所 松原弘直