自然エネルギー100%世界キャンペーンは、これまでの世界各地の自然エネルギー100%に向けた取り組みの実績や成功事例を踏まえ、持続可能なエネルギー転換のための実用的なツールキットとして「100%自然エネルギー・ビルディング・ブロックス」を開発しました。自然エネルギー100%プラットフォームでは、このツールの概要版を日本語に翻訳しました。
地域の自然エネルギー100%をめざす政策構想ツール
このツールでは、具体的な自然エネルギー100%の実践方法として、全10項目のビルディング・ブロックス(構成要素)によるアプローチが示されています(図1)。ビルディング・ブロックスは、すべてのエネルギー投資が自然エネルギー100%となることを前提として、分散型かつ市民の参加を中心とするアプローチで社会をより早く変革するような政策を実現するためのガイドを提供します。そのため、政策立案者や政府関係者だけではなく、自然エネルギー100%という目標を持ってコミュニティのエネルギーシステムを変革しようとする考え方がツール開発の背景にあります。
政策目標やその進捗の評価を行う上での政策ガイダンスはとても重要です。政策決定者や地域の代表者は持続可能な開発のフレームワークを実現するためのツールを必要としています。そこで、自然エネルギー100%の意味を解説したり、必要なロードマップを開発したり、自然エネルギ-100%の基本計画を策定する上でのガイダンスを示すツールとして、ビルディング・ブロックスは開発されました。
同時に、コミュニティや地方自治体における効果的なモニタリングとベンチマーキングの方法が示されています。先進的な都市や地域では自然エネルギー100%の未来を確実に実現することにより、収入の不均衡さの改善や社会的福祉、長期間にわたる環境保護の実現を目指して、これらの課題に取り組んでいます。
これらの主要な課題に取り組むため、自然エネルギー100%世界プラットフォームのメンバーやサポーターは、マルチステークホルダーによる協議のプロセスを実践し、共有可能な経験の分析や学んだことを共有してきました。これらの包括的な10項目のビルディング・ブロックスのツールは、持続可能な自然エネルギー100%への転換の実現と評価を支援します。
各ブロックは、地域特有の様々な政策、社会、文化および経済条件さらに政治的な境界を越えて利用することが可能で、政策決定者のためのガイドとしても提供されています。そのため、各国の政府や地域の事情を反映した上で、モニタリングやベンチマーキングのツールを利用して独自に自然エネルギー100%のロードマップを作ることができます。
ビルディング・ブロックスの使い方
ビルディング・ブロックスには、10項目それぞれにワークシートが用意されており、行政関係者や民間のさまざまなアクターが対話を通じてワークシートに地域の情報を記入し、協働で地域の自然エネルギー100%の未来に向けたプロセスを構想します。
例えば、「地域資源ポテンシャルの活性化」の項目では、大きく3つのブロックとして「地域資源の動員」「事前調査」「支援と援助のためのプログラムの明確化」があり、それぞれに潜在的なステークホルダーの関心や物理的な自然エネルギー資源のポテンシャル、エネルギー需要の状況、既存の政策的支援の有無などを書き込むことができます(図2)。
自然エネルギー100%プラットフォームでは、自然エネルギー100%に取り組む団体(自治体、企業、NGO、教育機関等)の宣言を受け付けています。ビルディング・ブロックスを活用して地域コミュニティでの100%宣言を検討してはいかがでしょうか。
宣言を登録した団体はホームページ上のマップに宣言内容が表示されます。また、自然エネルギー100%のロゴを使用することができます。自然エネルギー100%宣言の登録はこちらから。
執筆:松原弘直(環境エネルギー政策研究所)