地域や企業など様々なレベルで自然エネルギー100%の実現を目指す動きが国内外の各地で広がっています。千葉県市川市で6月8日に開催された「自然エネルギー100%シンポジウム&上映会」は、リネットちば(自然エネルギーを広めるネットワークちば)、千葉商科大学、CAN-Japan(自然エネルギー100%プラットフォーム)の共催で開催されました。
パリ協定による気候変動問題への国際的な取り組み、世界の自然エネルギー100%への最新動向、そして自然エネルギー100%大学を掲げる千葉商科大学(千葉県市川市)の取組みを紹介し、地域からの自然エネルギー100%の実現について議論しました。その後、ゆっくりとしかし確実に広がる地域での自然エネルギーによる人々の営みが描かれたドキュメンタリー映画「おだやかな革命」が上映され、参加者全員で鑑賞しました。
第1部のシンポジウム「地域から目指す自然エネルギー100%のまちづくり」では、最初に「脱炭素化に向かう世界と日本の課題」について気候ネットワークの平田仁子さんから世界的な気候災害の拡大が現実化する中、2015年の「パリ協定」成立の意義、2018年10月に公表されたIPCC1.5℃報告書の意味するところや、企業の責任を果たすためのSBT(サイエンス・ベースド・ターゲット)やRE100等への参加、機関投資家によるダイベストメントやESG投資の流れが紹介されました。
特に緊急の課題として、2030年までの石炭火力の全廃方針を決めた30政府と22都市が参加する脱石炭国・自治体・企業の連盟(PPCA)がある一方、日本国内では今なお24基(約1,400万kW)の石炭火力の新規計画が進行している問題を取り上げ、市民として国・自治体の政策・対策に明確な要求をし、所属する主体において責任ある行動を今すぐ実行することを呼び掛けています。
環境エネルギー政策研究所の松原弘直さんは「自然エネルギー100%へ向かう世界の最新動向」として、世界の自然エネルギーの急成長(特に風力と太陽光)と、それに伴う発電コストの低下、世界各国の状況を日本と比較しながら紹介し、日本国内での自然エネルギーを取り巻く現状と課題について示しました。
国内でCAN-Japanが取り組む「自然エネルギー100%プラットフォーム」の紹介や、コミュニティパワー(ご当地エネルギー、市民共同発電所)の重要性についても紹介しています。
千葉商科大学の原科幸彦学長からは、自然エネルギー100%大学としての取り組みを紹介して頂きました。2017年にスタートした学長プロジェクトでは持続可能な社会づくりへの大学の貢献として、地域分散型エネルギー社会形成の拠点として自然エネルギー100%大学を目指しています。「先ず、隗より」を合言葉にファースト・ペンギンとして具体的事例を示すことで、SDGsのゴール12で示されたエネルギーを使う責任・つくる責任を果たそうとしています。
2017年11月には、自然エネルギー100%プラットフォームの宣言団体となり、具体的な自然エネルギー事業および省エネ事業を進めて来ました。2018年度には大学が所有するメガソーラー野田発電所(2.88MW)による年間発電量と市川キャンパスの消費電力を同量する目標を2019年2月までに達成しました。さらに、2018年度に市川キャンパス内の建屋屋上に自家消費の太陽光448kWを設置し、2020年度までに消費エネルギー(熱を含む)と太陽光発電の発電量を同量にすることを目指しています。