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コロナ禍が続くなか、2021年には経済活動は世界的に急速な回復傾向にありましたが、その影響で化石燃料などの資源価格が上昇し、電力価格の高騰が引き起こされました。その後のロシアによるウクライナ侵略により、欧州を中心にさらなるエネルギー危機に見舞われています。日本国内を含めて国際的な天然ガスの需給ひっ迫により2021年秋以降、電力価格が高騰しています。それまで平均して10円/kWhを下回っていたスポット市場価格が、3倍以上の月平均で30円/kWhを超えるほどになっているのです。

一方で、世界の自然エネルギーの新規導入量は2021年には257GWに達し、前年の2020年より3%の低下に留まりました※1。その結果、2021年の新規発電容量に占める自然エネルギー電源の割合は81%に達しました(前年の79%からさらに増加)。自然エネルギーは、最もコストの低い新規電源になりつつあり、このエネルギー危機の影響とカーボンニュートラルに向けた動きが加速することで、さらに新規導入量の増加は続くと予測されています。その中でも最も増加している自然エネルギーは、133GWが新規に導入された太陽光発電です。風力発電は93GWが新規に導入されました(陸上風力72GW、洋上風力21GW)。

※1: IRENA “Renewable Energy Statistics 2022” 2022年7月 https://www.irena.org/publications/2022/Jul/Renewable-Energy-Statistics-2022

このような状況の中で、自然エネルギーのコストは着実に低下をしています。IRENAの自然エネルギーの発電コストに関する最新レポート”Renewable Power Generation Costs in 2021”では、2021年に導入された自然エネルギー発電設備のコストを発電種別ごとに比較すると共に、過去のトレンドや国別の詳細な分析を示しています※2。2021年に新たに導入された自然エネルギーの発電コストは、前年から引き続き低下しており、太陽光発電は前年比13%、陸上風力は15%、洋上風力は13%のコストダウンになっています。確かに2021年は燃料価格などの上昇によりサプライチェーンでの機器価格などの上昇がありましたが、プロジェクトの総コストの上昇には至らず、機器の性能も改善されています。太陽光発電の発電コスト(LCOE)は、前年の0.055 米ドル/kWhから0.048 米ドル/kWhになり、前年比13%減少しており、2010年から2021年の11年間で88%低下しました(図1)。陸上風力も、前年の0.039米ドル/kWhから0.033米ドル/kWhになり、前年比15%減少して、2010年から2021年の間に発電コストは60%低下しました。これは、風力タービン価格が下落している中国市場の割合が高くなっていることも影響しています。2021年に中国市場が席巻した洋上風力についても発電コストは前年の0.086米ドル/kWhから0.075米ドル/kWhと、前年比13%下落しています。

※2:IRENA  “Renewable Power Generation Costs in 2021 “ 2022年7月 https://www.irena.org/publications/2022/Jul/Renewable-Power-Generation-Costs-in-2021

図1: 世界平均の総導入コスト、設備利用率および発電コスト(LCOE)のトレンド(2010 – 2021年)
出所:IRENAレポート”Renewable Power Generation Costs in 2021”図に加筆

実際に2022年の自然エネルギーによる経済メリットは、過去にないほど拡大すると考えられます。

2022年の天然ガス卸価格を0.109米ドル/kWhと想定すると、発電コストは0.23米ドル/kWh(CO2価格を除く)となり、2020年と比べて5倍以上になります。EUの排出権取引制度(ETS)のCO2価格を加えると、0.27米ドル/kWhとなり、2020年比で6倍以上となります(図2)。この発電コストは、2021年に新たに欧州に導入された太陽光発電や陸上風力発電の4~6倍になっています。このような化石燃料の高騰を考慮すると、世界的に2021年に新規に導入された自然エネルギー発電設備だけで、1年間に550億米ドルが節約できた計算になります。さらに、欧州では化石燃料価格の高騰により、2022年前期の5か月の間だけで、これまで導入した太陽光発電および風力発電といった自然エネルギー発電設備のおかげで500億米ドル規模の化石燃料の輸入を回避できたと考えられます。もし、自然エネルギーが導入されていなければ、消費者、経済、環境にとって、もっと悪い状況になっていたでしょう。

図2: 事業用太陽光の発電コスト(LCOE)と化石燃料ガス燃料費・CO2合計価格の比較
出所:IRENAレポート”Renewable Power Generation Costs in 2021”図に加筆

 

特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
松原弘直