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※IRENAおよびGWEC等の最新レポートに基づき、データを修正しました(2023年4月)。

2022年はロシアのウクライナ侵攻に伴う世界的な化石燃料価格の高騰がエネルギー市場に多大な影響を与え、エネルギー危機が現実のものになりました。一方で、新型コロナウィルスの影響からの世界経済の回復により、世界全体のCO2排出量は増加し、パンデミック前の水準に戻っています※1

その中で、昨年2022年の自然エネルギーの成長は加速し続けており、2022年末までには太陽光発電の累積の設備容量は1000GW(ギガワット, 1GW=100万kW=原発1基分)に達して、ついに1TW(テラワット)の領域に入りました。風力発電も900GWを超えたと推計され、合わせると約2TWとなり、原子力発電の設備容量(約400GW)の約5倍に達しています(図1)。

※1 Global Carbon Project: Carbon Budget 2022 https://www.globalcarbonproject.org/carbonbudget/

一方、原発の設備容量は2022年も廃止が新設を上回り、引き続き減少しています。さらに、2022年の太陽光と風力と合わせた年間導入量は約270GWに達して、前年の約250GWをさらに上回り、過去最大となりました。2022年の太陽光発電の年間導入量は約190GWになりました※2

※2 IRENA “Renewable Energy Capacity Statistics 2023” http://www.irena.org/ およびSEIA “U.S. Solar Market Insight” https://www.seia.org/us-solar-market-insight

一方、風力発電は約77GWが1年間に導入されました※3。累積の設備容量では2021年末までに太陽光発電が風力発電を追い抜いています。2021年の時点で、年間の発電電力量でも、太陽光が約1000TWh、風力が1800TWhで合わせて約2800TWhとなり、原発の2650TWhをすでに上回っています※4

※3 GWEC “Global Wind Report 2023” https://gwec.net/globalwindreport2023/
※4 The World Nuclear Industry Status Report 2022 https://www.worldnuclearreport.org/

世界全体の2022年の低炭素技術への投資額は1.1兆ドルに達したとBNEF(Bloomberg NEF)により推定されていますが、前年から30%増加して過去最大の投資額でした※5。このうち自然エネルギーへの投資額は過去最高の4950億ドルに達して、前年から約17%増加しています。さらにバッテリーを含む電気自動車(EV)関連の投資が4660億ドルに達し、前年から54%増加しており、自然エネルギーへの投資を上回る急成長をして、投資額で迫っています。水素関連への投資額は、いまだ11億ドル程度で、投資額全体の0.1%に留まっています。国別では、中国が圧倒的なリードを見せており、全体の約半分の投資額5460億ドルに達しています。国別の第2位は米国で1410億ドルでしたが、ドイツが第3位で、EU全体の投資額は1800億ドルに達しています。

※5 BNEF https://about.bnef.com/blog/global-low-carbon-energy-technology-investment-surges-past-1-trillion-for-the-first-time/

IEA(国際エネルギー機関)が公表した自然エネルギーの展望に関する最新レポート”Renewables 2022”では、2022年から2027年までのこれから5年間の予測が示されており、この期間の新規導入量が2.4TWに達すると予測しています。つまり2016-2021年の5年間の平均では、自然エネルギー発電設備の年間導入量は200GW程度でしたが、これからの5年間(2022-2027年)には、毎年平均で480GWが導入されると予測しており、世界全体の発電設備の90%に達するとしています。

図1: 世界の自然エネルギー(太陽光および風力)および原子力の発電設備の導入量(出典:IRENA、GWEC、IAEAなどのデータから作成)

ドイツでは2000年には7%程度でしたが、その後、2010年には20%近くにまで増加し、2020年には44%に達しました。2021年は風況のため風力発電の発電量が減少した影響で40%程度に減少しましたが、2022年には44%に再び達しています(図2)。なお、この再エネの割合は年間発電電力量に対するもので、年間電力消費量に対しては46%に達しています。ウクライナ危機により、ロシアへの天然ガス依存からの脱却を実現するため、2022年の新たなEEG法案(再生可能エネルギー法)では、再生可能エネルギー電力を2030年には80%以上、2035年には100%を目指すとしています。ドイツは2000年の時点ではわずか自然エネルギー6%だった自然エネルギー電力の割合が2022年には44%と7倍になりました※6

※6 AGEB “STORMMIX 1990-2021” https://ag-energiebilanzen.de/

一方で、原発の割合は29%から6%台まで低下しており、原発全廃と定められた2022年末に向けて着実に減少してきましたが、天然ガスの供給懸念※7により、廃止を予定している原発を2023年まで温存する措置もとられています。ドイツ国内で産出される褐炭を含む石炭の割合は、2000年には50%を占めていましたが、2020年には排出量取引(EU ETS)での炭素価格の上昇などが要因となって23.4%まで減少しました。2022年は天然ガスの高騰の影響などで石炭が31.7%にまで増加しましたが、それでも風力と太陽光を合わせたVRE(変動性再生可能エネルギー)の割合32.7%の方が上回っています。

※7 「もし、ロシアからドイツへのガス供給がストップしたらどうなるか?」https://www.energy-democracy.jp/3953

図2: ドイツ国内での自然エネルギーの発電電力量と全発電電力量に占める比率の推移(出所:AGEBデータ等より作成)

 

環境エネルギー政策研究所
松原弘直