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昨年12月、パワーシフト・キャンペーンと朝日新聞社は、自治体・地域新電力に対する電力市場価格高騰の影響を調査した報告書「自治体・地域新電力の可能性と市場価格高騰―2022調査報告書」を公表しました。

以下は、この調査に関するパワーシフト・キャンペーンの記事を許可を頂いたうえで転載したものになります。

 

市場価格高騰が自治体・地域新電力にも大きく影響
脱炭素・地域経済循環の重要なプレイヤーの維持・発展を

2022年12月2日
パワーシフト・キャンペーン、朝日新聞社

電力システム改革、電力小売全面自由化を機に、全国に多数の新電力会社が発足し、2022年には約700者が電力小売事業を行っています。その中で、大きな注目を集めたのが自治体・地域新電力です。地域に電力を供給し、地域の再エネ電源を調達・開発することで、地域での経済循環を促す役割が期待されています。

ところが、2021年から起こっている電力市場価格の高騰が、そうした自治体・地域新電力にも甚大な影響を与えています。事業開始後間もないため電力市場からの調達の割合が高かったり、FIT電気(調達価格は電力市場価格に連動)の調達を重視したりしているためです。
一方、2050年カーボンニュートラルに向けて自治体の役割は重要です。自治体のゼロカーボンシティ宣言もひろがりを見せ、環境省も「地域脱炭素ロードマップ」(2021年6月)政策で後押しをしています。自治体で脱炭素を実現するためには、再エネと省エネに最大限に取り組むことが第一です。その実現に向けて、自治体・地域新電力は大きな役割を果たす可能性があります。

化石燃料価格の上昇に終わりが見えない現在、自治体・地域で再エネを開発し、調達して地域で使う、再エネによる地域の経済循環をつくり、拡げていくことには大きな期待が寄せられます。パワーシフト・キャンペーンと朝日新聞社は、電力市場価格の高騰がこの流れにどのような影響を与えているのか調査を行いました。

「自治体・地域新電力の可能性と市場価格高騰―2022調査報告書」
2022年12月2日 パワーシフト・キャンペーン、朝日新聞社
<<報告書のダウンロードはこちら>>
<<プレスリリース(このページの掲載内容)はこちら>>

 

<調査概要>

◆調査タイトル:
自治体・地域新電力の可能性と市場価格高騰の影響に関する調査
◆調査目的:
自治体・地域新電力への電力市場価格高騰の影響を明らかにするとともに、自治体・地域新電力の電源構成や電力調達の実態や今後の方針を調査し、地域分散型再エネ社会へのシフトに向けた今後の役割について考察する。
◆実施主体:
パワーシフト・キャンペーン運営委員会、朝日新聞社
◆調査対象と回答数・回答率:
自治体が出資・関与している新電力89者(経済産業省のリスト、既存調査等から抽出)
アンケートへの回答は、うち72者(回答率約81%)
◆調査方法:
調査対象全体に対し、公開情報をもとにした文献調査を行った。加えて、調査票をメールで送付し、オンラインフォーム等で回答を得た。必要に応じて、詳細に関する電話ヒアリング等を実施した。
◆調査内容:
(文献調査)自治体が出資もしくは関与している新電力について、公開情報をもとに抽出・整理
(アンケート調査)小売事業の概要、市場価格高騰への対策、設立の目的、自治体の気候政策との関係など
◆調査期間:
2022年8月~10月

<調査から見えること>(抜粋)

◆市場価格高騰は自治体・地域新電力に深刻な影響
・調査回答のうち9割近くが「経営に影響がある」と回答、また経営面での対策として、約8割が新規受付停止や営業停止をあげている。市場価格高騰が今後も収まる見通しが見えないなか、事業の停止や撤退も懸念される状況である。(p.8、9)
・自治体・地域新電力は、卸電力市場およびFIT電気の調達割合が比較的高く(p.8)、高騰の影響を受けやすいため、市場価格高騰の影響を受けにくい電力調達が模索されている。大手電力や大手新電力、ベースロード市場など「地域の再エネ」ではない調達を余儀なくされる状況もみられる。(p.11)

◆市場価格高騰への早急な対策を求める声
・自治体・地域新電力各社は、大手電力との公平な競争環境を強く求めている。(p.13)
・異常な市場価格高騰を回避するような電力市場改革を望む声も多くあげられている。(p.13)
・特に、FIT電気の引渡し価格(回避可能費用)が市場価格に連動するしくみの改善を求める声が大きい。FIT電気調達をすでに減らしたという声もあり、地域での再エネ活用の妨げとなることが懸念される。(p.11、13)

◆域内の再エネを増やし、調達することが鍵
・市場価格高騰の状況下では、非FIT再エネの調達が重視され、域内での新たな再エネ設置や調達の実施・検討が進められている。(p.11)
・化石燃料輸入価格が高騰している今こそ、再エネや地産地消の優位性が高まっている。(p.15、16、17)

◆自治体・地域新電力が持つ重要な役割
・再エネの設置・利用拡大を、脱炭素先行地域への応募などの気候変動政策と連動して進める動きがみられる。(p.17、18)

<提言>

◆地域の重要なプレイヤーとして自治体・地域新電力の活用を
・再エネ社会への大きな転換のために、エネルギーシステムのあり方を地域分散・地域主体に変えていく必要がある。自治体・地域新電力は重要な役割をもつ存在である。
・地域主体で、自然環境と共生する再エネの開発を進めていくことが不可欠である。
・自治体や地域は、市場価格高騰と化石燃料価格高騰を逆手にとり、地域での気候変動政策を進めるチャンスとすべき。新電力にも需要家にもメリットとなりうるPPA(電力購入契約)やデマンドレスポンス、など様々な再エネ・省エネ施策の可能性がある。
・公営水力発電については、自治体・地域新電力が地域の電源として活用できるよう、さらに道を開くべきである。

◆市場価格の高騰が続く状況には早急な改善を
・脱炭素社会実現に向け、再エネを積極的に進める主体となりうる自治体・地域新電力が危機に瀕している状況は、電力システム改革の失敗とも言える。抜本的に見直さねばならない。
・大手電力と新電力との競争環境の格差を、早急に是正する必要がある。

◆FIT制度の改善を
・FIT電気の引渡し価格(回避可能費用)が市場価格と連動していることについて、早急な改善が必要である。自治体・地域新電力が地域のFIT電気調達を減らすことにもなりかねない。
・環境省の「地域脱炭素ロードマップ」でも地域の再エネを進めることとされているが、現状では制度の課題もあり、改善が求められる。例えば低圧(50kW未満)のFIT申請で3割を自家消費とする要件など、ポテンシャルを活かした導入を阻害している。

「自治体・地域新電力の可能性と市場価格高騰―2022調査報告書」
2022年12月2日 パワーシフト・キャンペーン、朝日新聞社
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-転載ここまで-

この調査に関しては、自然エネルギー100%プラットフォームでもウェビナーを開催しました。リンク先に動画などを公開しておりますので、興味のある方はぜひご覧ください。